プラトンは、人間が生まれつき善を希求する存在であることから、人間の魂も善を志向した性質を持っているとしました。
この魂の性質を説明するにあたり、まず理想的な国家の守護者が持つべき性質を三区分して述べ、その後、それを人間の魂にもあてはめる、というやり方で明らかにしていきました。
魂の三区分説
プラトンの考える理想的な守護者の持つ性質は、以下の通りです。 まず第一の性質は節制であり、
魂が自らのうちに自然に生じる欲望と快楽について中庸を保つこと
第二の性質は勇気であり、
恐怖にたじろかぬ魂の状態を保っていられること、
第三の性質は知恵であり、
永遠にあるもの(=善)についての知識。存在する諸物の原因を観想する知識を絶えず希求し、また身に着けていること
プラトンは、こうした守護者が国家の支配者であれば、国民はもっとも幸福であるし、また、悪意ある外敵からも身を守ることができるのだとしています。 そして、 これらの性質の調和の結果実現されるのが 正義であり、
心が自分自身と思いを同じくすること。そして、心の諸部分が相互に、かつそれら相互関係における一切のことについてよく秩序付けられていること
とまとめられます(まるで、カールロジャーズのいう「自己一致」!)。 プラトンは次に、この性質を人間全般の魂について対応させ、その性質を三区分して説明を行います。
まず、第一の性質は理知的部分で、「学ぶこと知ることを愛求する部分」。
そして、理知的部分に反抗し、肉体的な欲望に向かおうとする第二の性質が欲望的部分で、「金銭・利得を愛求する部分」。
両者の間にあって、総じて理知的部分を助ける第三の性質が気概の部分であり、「勝利、名誉を愛求する部分」です。
これらの部分の関係を、プラトンは以下のような馬と従者の比喩を用いて語っています。
馬と従者の比喩
従者は善そのものに向かって、二匹の馬を走らせる。片方の馬は理知的部分であり、もう片方の欲望的部分の馬である。
理知的部分の馬は、この善そのものに向かって直進していくが、欲望的部分は暴れてそれを邪魔する。
この欲望的部分のせいで、一時は地に落ちてしまうのであるが、気概的部分である従者がこの欲望的部分をなんども鞭で叱咤する。
そして、最終的にはこの欲望的部分の馬を従属させ、理知的部分の馬と共に、かの善に直進していく。
プラトンは、このように、魂をできるだけ肉体的な欲求のしがらみから分離し、魂のもともとの善の性質を強めていくプロセスを「魂の清純化」と述べています。
そして、清純化をすすめることで、現世だけでなく、死後も同じ性質を持つと考えられる善そのものに近づくことができ、幸福になれるのだといいます。
人間の魂が憧れの「善」そのものに到達し、本当に幸福になるためには、まず肉体的な欲望や快楽を気概を持って節制し、その上で様々な創造活動や徳の実践を通して、善を体現していかなければならないのでしょう。
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